青空文庫で永井荷風「江戸芸術論」公開

図書カード:江戸芸術論
永井荷風の江戸芸術論です。永井荷風のあらゆるものへの造詣の深さは驚愕してもし足りない。出発点は父親の漢詩だった。あらゆる漢詩を暗記して、著作の随所に気ままに連想が働いて出てくる。
フランス語と英語も理解する。江戸時代の戯作を読みふける。
そしてこの「江戸芸術論」はその大部分が浮世絵の研究に割かれている。
作業するものは絶対に全部読むことにしていて、これも読みはじめて、もし途中で飽きるようだったら読むのをやめて、作業するのもやめようと思っていた。じっさい浮世絵なんか、それまではほとんど興味がなくて、常識程度のことも危うかったけど、読んでいるうちに、自分なりの楽しみ方を見つけた。
浮世絵はこう言っちゃなんだけど全部同じ顔に見える。たぶん見慣れてない現代の人はみんなそうだと思う。あまりに様式化された描き方を、見分けるだけの眼がもうなくなったということだ。
それが、永井荷風の文章での描写を読むと、どんなところを描いた絵なのかが、よくわかる。また読んでいる間は、それが美しく感じられる。
「見る目がある」というのがどういうことか、どんな視点を持っていることが絵を見るということなのか、ということに関して考えながら読むと、いろいろと示唆することがある。