今年の本

今年とくに影響を受けた本を挙げていきます。
白川静「文字逍遥」平凡社ライブラリー
白川静「漢字百話」中公新書
白川静が漢字の仕組みから明らかにする古代人の精神のあり方は、読んでいていろんな気分をもよおす。
高橋悠治|コレクション1970年代」平凡社ライブラリー
現代音楽家のエッセイ集。「スペクトラムアナライズによって、音楽の全てを明らかに出来るだろうというのは間違っていた」ということを、サラっと、しかし実作者の立場からよくわかるように語られているのを読んだというそれだけでも価値のあることだった。
永井荷風「すみだ川・新橋夜話 他一篇」岩波文庫
永井荷風の熱はちょっと冷めた。しかし、西洋と東洋の入り混った美学の感覚や、時代とのあつれきや、文章に対する感覚とかが、根をおろした。
ゴーゴリ「死せる魂」岩波文庫
ついさっき、中巻に当る、第一部を読み終った。書かれたのは第二部の途中までだった。三部まで書かれる予定だったけどその前にゴーゴリは死んでしまった。
一部の最初の方を書いている時点では、ちょっとした話を書く予定だったけど、それが大作家の目にとまって、いたく褒められたために、ロシア全体を書くために、長くなった。
さっき読んだ第一部の終りの方では、その壮大な計画について作中ではっきりと触れている。最終的には、第一部では卑俗でしかありえなかった登場人物達が、第三部では救われるんだということをほのめかす。その先の第二部は、遺稿の断片しか残されていない。