だんごろうさんのトーク分析

「おじいちゃんがクレーマーだった話」が妙に気になる。内容じゃなくて語り方が。
あえて本人に「実際のところ」は聞かず、空想をふくらましてみる。



おじいちゃんは毎日ラジオ体操を欠かさなかった。ある日いつものようにラジオ体操を楽しくやっていたら、途中で地震速報が入った。おじいちゃんはNHKに電話をかけた。
「ラジオ体操をしてたら、他の放送が入ったんだけど、これはどういうことだよ」
「しかもこの速報は一時間前にも流れたけど、これは本当にまた流す必要があったの?」
(話が細かすぎることに注意)
NHKの人は丁重に、「やはり緊急事態ですので、速報がラジオ体操より優先されるんですよ」と冷静に対応した。


そもそもだんごろうさんは、その場にいたのか? それとも、その時はどこかに行っていて、それから家に帰った時に、おかあさんか何かから、「またおじいちゃんが……」という話を聞いたのか。
その場にいたとしたって、なんで電話の対応の仕方がわかるのか。
これがおじいちゃん自身があとで説明したことだったら、面白い。
むすっとしてトーストさえ口にしようとしないおじいちゃんに、だんごろうさんのおかあさんが「お義父さん、さっきまた何か、かけてたでしょ」と聞きだそうとする。
「全く取り合ってくれなかった」ふだんは別に和食しか食べないということはなく、トーストならジャムをたくさん塗って、おいしそうに食べる。
「朝ごはん、食べないと毒ですよ」
「ラジオ体操が途中で終ったから、腹が減らんのだ」
幼いだんごろうさんは、テレビのヒーローものがはじまるのを待っている。早めにこのちょっとした口論が終って、しずかにヒーローものが見たいと思うだけだった。
地震の方が大事なことくらい、わかるでしょ?」
「ちがうんだよ、地震はさっき流してたの」
「どういうこと?」
「ラジオ体操の前にすでに速報は流れたから、二度も流す必要なかったんだ」
だんごろうさんの姉(いるか知らないけど)が階段を(あるかわからないけど)下ってくる。木の引き戸(なのか知らないけど)を開ける前に、おじいちゃんのどなり声が聞えてきて、うんざりしている。姉の年齢なら別にりちぎに朝食を食べなくても気にならないけど、それでもそこまでややこしいことじゃなさそうなのと、おいしそうなトーストの匂いにつられて食卓に入る。
「ゆり子(だんごろうさんの姉(いるか知らないけど))聞いてよ、おじいちゃんがまた……」
「あいつ聞きもしねえで、『やはり緊急事態ですので、速報がラジオ体操より優先されるんですよ』ですとさ」
「だんごろう、先週◯◯(ヒーローもの)見せてあげたから今日は□□(女の子もの、同時に放送される)見るからね」
「ちげーんだよ、今日は良い所なんだから」
「なんで見る前に『良い所』がわかるのよ」
「震度四が緊急事態なもんか!」
「トーストが冷えますよ、早くめしあがって下さい」